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映画『新しき世界』  アウトサイダーが作る「新世界」 ―第二章 ジャソンの選択

第二章 ジャソンの選択

 第一節 揺れ動くジャソン

 

 ジャソンは本編で火のついていない煙草をただ咥えるという行動を度々取ります。このジャソンの行為について監督は、

「イ・ジャソンはおびえ・不安でタバコを吸うことができなかったが、最後の場面になって安心して煙草を吸うことができた」*1

と語っています。

 ジャソンの不安とはなんだったのでしょう。ジャソンが喫煙に至る心の動きを、煙草の演出を中心に読み解きます。

 ジャソンは最初から咥えた煙草に火をつけない人物ではありませんでした。六年前の麗水で兄貴分のチョン・チョンと共に敵対組織への襲撃に向かう前のシーンでは、火のついた煙草を吸いながら歩いています。

 それが、ある出来事がきっかけで煙草にライターで火をつけることができなくなります。

 ここで火をつけて喫煙をするショットのある人物と、火をつけないでただくわえるショットのある人物を整理しましょう。

 

【火をつけて喫煙するシーンのある人物】 

1.チョン・チョン

2.カン課長

3.イ・ジュング

5.コ局長

4.ソンム

6.六年前の麗水のイ・ジャソン、会長になったイ・ジャソン

 

【火のついていない煙草をただくわえている人物】

1.上記以外のイ・ジャソン(3回)

2.チョン・チョン(1回)

3.コ局長(1回)

 

 この映画では、主要人物の男性はほぼ全員煙草を吸っています。ヤクザも、警察組織の人物も関係ありません。

 イ・ジャソンが喫煙するシーンは、この映画の中で2箇所です。それは、6年前の麗水でチョン・チョンとの待ち合わせ場所に向かう場面*2と、そして組の会長になり高層ビル上層階にある会長席から窓下を見下ろすジャソン*3、この2場面です。

 この6年の間、映画ではジャソンが煙草に火をつけて吸うシーンはありません。

 火のついていない煙草をくわえる行為を、監督は「不安」の象徴だと明言しています。

 6年前の麗水にいたジャソンが、煙草に火を付けられなくなるきっかけ──それはチョン・チョンとの敵対組織への襲撃です。

 まだスーツを着ていない若いジャソンが、いかにもチンピラという風情の派手な柄シャツに坊主頭のチョンと、大勢の敵が待つアジトにたった二人で切り込んでいきます。無謀に見えた殴り込みがどうやら成功に終わり、服が破られ血のついたジャソン、そして同じく返り血を浴びた兄貴分のチョンは、二人で煙草を吸おうとします。ジャソンは兄貴に自分の煙草を差し出し、二人で煙草を合わせ乾杯します。ジャソンは自らのライターで、チョンの煙草に火をつけようとします。しかし、ジャソンのライターはいくら擦っても火がつきません。ジャソンはライターを捨ててしまいます。チョンは「クソ」と毒づき、すぐに火のつかない煙草を捨てて、画面からフレームアウトします。しかし、ジャソンはフレームにそのまま留まり、火のついていない煙草をくわえたまま歯を見せて笑います。*4

 ジャソンは一貫して警察とヤクザの間で揺れ動く人物として描かれています。

 ジャソンの「不安」とは、自分が警察であるとも、ヤクザであるとも言い切れない、曖昧な状態だったのではないでしょうか。それは彼の韓国華僑であるという境遇と重なり、一層孤独を強調します。

 襲撃前の喫煙から、ジャソンも該当シーンまでは自分が警察であるとはっきり自認していたことが伺えます。そのジャソンがチョンとの襲撃をきっかけに火をつけられなくなるのです。おそらくチョン・チョンがジャソンの本物の兄、そして家族になった瞬間がこの時だったのでしょう。

 これは、彼の警官かヤクザか、という自認の揺らぎが、チョン・チョンとの兄弟の絆に端を発していることを示唆しています。

 しかし、ラストシーンで、煙草に火をつけられなくなったジャソンは、火のついていない煙草を咥えたまま歯を見せて笑います。それは映画の中で一度も見せていない、心からの笑顔です。チョン・チョンとの兄弟の絆が自認の揺らぎという「不安」の発端でありながら、彼はその絆を心地の良いかけがえのないものだと感じていたのではないでしょうか。

 

 次に火のついていない煙草をジャソンがくわえるシーンは劇場公開版では以下の通りです。

 

【火のついてない煙草をくわえるシーン】 

1.冒頭、チェ理事を拷問した後(自分の煙草を取り出す)*5

2.葬式、ジュングとカン課長が揉めているのを眺めながら*6

3.6年前の麗水で襲撃後

 

 ジャソンは他の理事が警察内通者として殺される時も、ソク会長の葬式でカン課長とジュングとの一悶着を見守っている時も、火のついていない煙草をくわえて、ただ佇んでいます。自分から意見を述べたり、自ら手を下すこともなく、己が所属する二つの世界を傍観していました。

 映画の序盤で、ジャソンは潜入捜査官をやめて警察に戻り、海外勤務になることを希望しています。しかし、カン課長は次々と新たな指令を与え、ジャソンを手放そうとしません。*7

 ジャソンにとって「父」なる警察の代表がカン課長であり、「兄」であるヤクザの代表がチョン・チョンです。警官とヤクザの間で揺れるジャソンは、それを代表する二人の人物の間で揺れ動き、苦悩します。

 揺れ動く彼の心を伺わせる台詞として、同じ捜査官のシヌに吐露したこんな言葉がありました。

「ヤクザも俺を信じているのに、お前たちは違うのか。」*8

 最終的に、ジャソンはヤクザであることを選びます。

 そこに至るには、ジュングの手下に殺された、兄貴分のチョン・チョンの死、そしてその事件により間接的に流産に至った息子の仇討ちがありました。そして、ジュングの暴走はカン課長の計略であり、カンは意図したか意図せずかは別として、どちらの死にも関わっています。

 死産を示すジャソンの妻の脚を伝う血*9と、チョンが何度も刺され致命傷を負うシーンでのエレベーターの銀色の壁を伝う誰のものともとれない流血*10は、重ねて描かれます。血を分けた息子という犠牲と並列に描くことで、チョン・チョンという「兄」のジャソンにとっての重要性を強調しています。

 その後、ジャソンは正体を知りながら彼をかばい、絶命したチョン・チョンの愛情に触れ、泣きながら感情を露わにします。*11

 映画の前半部で、ジャソンはチョン・チョンからの妊娠祝い*12も、カン課長からの妊娠祝い*13も、同じように拒絶しました。しかし、この時チョン・チョンが遺した、あからさまな偽物であるペアのブランド時計を受け取り、己の右腕にはめるのです。*14

 

 

 

 

 

第二節 父の権威の失墜

 

 ジャソンが警察を裏切った、もう一つの重要な要素として、カン課長との関係の変化があります。カン課長の変化を彼と煙草の関係から読み解きます。

 この映画で、カン課長が旧来の「父」と「子」の象徴として描かれているのは第一章 第二節で述べた通りです。カン課長は高圧的な態度でジャソンに非道な命令を下し、部下を道具のように利用します。

 映画の中盤まで、カン課長はジャソンへ指示を出す時、常に煙草を吸っていました。ジャソンはカン課長に激高しながらも、いつも最後には従っていました。任務が延長になることを飲まされた時*15、チャン・スギと組むことを命じられた時*16にもカン課長の吸う煙草の煙がジャソンの顔を覆っていました。煙草の煙は、あたかも儒教的父系社会の権威の象徴のように、ジャソンから抵抗の意志を奪い、従わせます。

 カン課長の部下であったシヌの死と彼女の遺言をきっかけに、カン課長は禁煙をします。最後にジャソンと会う場面では、煙草の代わりに棒つきキャンディーをくわえていました。*17この時、下された命令にジャソンは従いませんでした。

 カン課長は禁煙と同時に、退職を願い出ています。これは、煙草を吸うのが警官か、ヤクザだとすると、禁煙したカン課長が退職を望むのはなんら不思議ではありません。また、禁煙を頼んだシヌの遺言が課長への退職を願っていたとも取れます。

 カン課長は子供のような年頃の部下を道具のように扱う非情な父親として描かれます。しかし、いくら頭が切れても上層部に自分の案である作戦を説明することすら叶いません。彼を腹心として使うコ局長はカン課長を手放さないために、辞表を独断で退けました。彼は第一章 第一節で述べた通り、学歴が原因で実力通りの地位を手に入れられない立場にあります。カン課長もまた警察上層部の前には、道具のように扱われ、利用される存在なのです。

 削除された中にこんなシーンがあります。コンビニでカン課長がカップラーメンを食べており、シヌは穏やかな表情でそれを見ています。カン課長が煙草を吸うために、ライターを使いますが、なかなか火がつきません。それを見かねたシヌが、代わりにライターを使い課長の煙草に火をつけてやります。

 この演出から、カン課長は一人で警官として立っていた訳ではなく、シヌという献身的な娘の存在があり、警官としてなんとか立っていたのだと伺えます。シヌを失ったカン課長が煙草を吸う警官の父親として、ジャソンを従わせることは、不可能でした。

 

 

 

 

 

 

 第三節 「新世界」という青空

 

 この映画では雨や青空という天気が意図的に使われ、登場人物の転機が訪れる場面を効果的に演出しています。例えば雨はジャソンが意図せずゴールドムーン会長のポストへと近づく事件が起こる時に使われます。

 

【雨が降るシーン】

 1.会長の交通事故。*18

 2.シヌとソンムが死ぬ、倉庫の一夜。*19

 3.チョン・チョンの葬式。*20

 4.ジュングがオフィスから観た、ジャソンらがチャン・スギを殺しているであろう山の上の雨雲。*21

 5.八年前、カン課長に潜入捜査官に勧誘される。

 

 雨の前と後では、ジャソンの顔つきがどんどん変わっていくのが見て取れます。

 青空が映っているシーンは以下の2箇所です。それ以外は曇り空か、雨、もしくは晴れていても画面に映りこまないよう意図的に隠されています。

 

【青空】

 1.カン課長との最後の対面後、釣堀の外で。

 2.ジュングが拘置所を出所した時。

 

 釣り堀でのカン課長との最後の対面の後、ジャソンは普段の色調の暗い画面と一線を画す、晴れ渡った青空の下に出ます。太陽は明るく、生い茂った木の葉が風にそよいでいます。ジャソンはたたずみ、何かに気づいたように空を見上げます。*22

 この時、ジャソンは青空に見たのではないでしょうか。もはや一人前の警官ですらない、弱くなった父を殺し、兄の意思を継ぎ、自らがゴールドムーンに君臨する新世界を。

 ジャソンの他にもう一人、「新世界」の青空を見た登場人物がいます。それがイ・ジュングです。拘置所からの出所のシーンですが、画面には鮮やかな青空が広がっています。そこに、別人のような姿でジュングが拘置所から出てきます。迎えには誰も来ていません。*23

  ジュングにつきまとうもう一つのモチーフ、それは窓ガラスです。ジュングは窓ガラスに囲まれるシーンが多くあります。まず、拘置所での面会の場面では、窓ガラスごしに撮られ、その顔には丁度、模様のように空いた無数の空気穴が顔を覆うようなショットが多く見られます。このガラスの壁に閉じ込められたジュングは、面会に来たチョン・チョンの裏切りを確信し、脅しをかけ二人を隔てるガラス張りの壁を強く叩きます。チョン・チョンは己の無実を訴えますが、ガラスの壁に隔てられたジュングには届きません。あたかもガラスの壁は彼の人の話を聞き入れない頑なさを表しているようです。腹心のパク・サンフンにも間違った指示を下します。これにより、ジュングの部下は残らず失脚の道へと進みます。

 そのジュングが唯一話を聞き入れた、カン・ヒョンチョルとのシーンではガラスの壁に隔てられない部屋での会話でした。隔てられない一室で、カンの提示するチョン・チョンによる警察への密告の証拠をジュングは信じ、怒り狂います。ガラスの壁/窓ガラスという、ジュングの心の壁に隔てられていない場所は、課長の話がジュングの心に届き、あまつさえそれを受け入れたことをわかりやすく演出しています。

 ジュングの敵対する人間への敵意は窓ガラスを割ることで表現されています。作中では、3つの場面があります。

 1.葬式場にて、警察の車の窓ガラスをジュングがゴルフクラブで割る。*24

 2.チョン・チョンを轢いた車のフロントガラスが割れる*25

 3.部下に連れられ逃げるチョン・チョンらを窓ガラスごしに撮ったショット。窓ガラスが割れる。*26

 ジュングが自ら割ったのは、葬式場の車の窓ガラスだけですが、以下の二場面でも窓ガラスが割れる演出を通して、チョン・チョンらを襲撃しているのがジュング派の一派であること、そして、その背後にジュングのチョン・チョンへの強い敵愾心があることが表現されています。また、ナ・グァンフンを襲撃したジュングの手下はゴルフクラブを凶器にしていました。*27

 このように彼を取り巻いていたガラスのモチーフや、ゴルフクラブ、を失い、オールバック、ネクタイやベストという、特徴を取り上げられたジュングは、鎧を脱がされたかのように無防備な印象です。

 ジャソンが見た新世界とは「弱体化したカン課長を殺し、兄弟分のチョン・チョンの意志を継ぎ、ヤクザの会長となる」というものでした。しかし、ジュングの見た「新世界」とは、迎えのない出所のように「暴走の結果、会長の椅子は手に入らず、己の暴走のせいで部下も無くしてしまった」というものでした。

 最後、ジュングは一人で建設途中のビルにある窓もない己のオフィスに戻ります。*28拘置所を出たところには何もありませんでした。これは、このオフィスや誰もいない拘置所の出迎えのように、ジュングの本質が、未完成で、空虚であると表現されているのではないでしょうか。

 青空の「新世界」を見た後、ジュングはガラリと人が変わります。死を目前に落ち着き払い、己を殺しに来たジャソンの部下たちに煙草を吸うことの許可を求めます。*29

 この映画では、煙草を吸うのは、己をヤクザ/警察と自己認識している人間です。モチーフという虚飾を脱ぎ捨て、己の未完成さ、空虚さを受け入れたジュングは、最後まで自分がヤクザであることを再認識し、ヤクザとして死んでいきます。その彼は最早チョン・チョンが呼んだような「万年思春期」ではありません。大人の男の態度で以て、死んでいきました。

 

 

 

 第四節 チョン・チョンの愛

 

 上司であるカン課長の胸倉を掴み、シヌに激高して囲碁盤を叩いて自分がケガをする姿、とは対照的に、ジャソンと兄貴分のチョン・チョンを筆頭にしたヤクザたちとの関係は親密なものとして描かれます。それは、中華料理店でのジャソンに子供が生まれることへの祝杯や、チョン・チョンとの複数回に渡るアイコンタクト、そしてシヌ相手にもチョンを「ボス(韓国語台詞はヒョンニム=兄貴)」と呼んでしまい「チョン・チョン」と言い直すシーン*30などで、表現されています。

 ジャソンが潜入捜査官であるという事実を知っているのは、カン課長、シヌ、コ局長の三人だけでした。

 ところが、チョン・チョンがジャソンを裏切り者であると知っていたと示唆する演出があります。それはジャソンに贈った偽物のブランド時計です。偽物だと見抜かれた後、チョン・チョンの「バレた?」という発言や、「バレないと言ったろ」と部下を攻める描写があることから、わざと偽物を買っていたことがわかります。*31偽りの生活を続けるジャソンは自分が偽者であることに敏感です。怒って突き帰します。

 パク・フンジョン監督は、チョン・チョンがジャソンに偽物のブランド品を送る理由について「これに対しパク・フンジョン監督は“チョン・チョンはジャソンの正体を分かりながらも‘私は偽物と本物に関係なく君が兄弟であることを認めている’という意味をこめている”と説明した。」というメッセージを送っていました。*32

 この後、香港のハッカーに警察本庁のデータベースをハッキングさせて得た資料により、チョン・チョンと弁護士はジャソン、ソンム、シヌが潜入捜査官であるという事実を知ることになります。

 チョン・チョンはそれを知りながら、ジャソンのことだけは始末しませんでした。ジャソンの正体を示す資料を金庫にしまい、隠蔽しようとします。

 死の床でも、チョン・チョンは、 

「もう会えないと思った。会えてチョー嬉しいよ、ブラザー。」

「そろそろ選べ」

「強く生きろ、舎弟よ。それがおまえの生きる道だ。」

 と、ジャソンを案じる言葉を繰り返します。*33

 ジャソンはそこで初めて、チョン・チョンが裏切り者であるという事実を知った上で、自分を愛してくれていたことを実感します。

 カン課長の父の愛は、自分の言うことを聞け、思う通りに動け、と相手を道具のように扱う条件付きの愛でした。しかし、チョン・チョンの兄の愛は、弟がどんな人間でも、弟を助けることで自分がどんな不利益を受けても、守り愛す、という無償の家族愛でした。チョン・チョンにとって、ジャソンは本物の家族だったのでしょう。

 その後、ジャソンはチョンの遺言通り、彼の事務所の金庫から、自分が警官であるという証拠の書類を受け取ります。その中には一緒に新しいペアの時計が入っていました。あからさまに偽物であるとわかるパンダのキャラクターのイラストがプリントされた時計です。それを見て泣き笑いの表情をしたジャソンは、その時計を腕にはめることで、時を越えて兄貴の気持ちを受け取ります。*34

 また、チョン・チョンは顔に同じく偽物のブランド品であるサングラスをかけています。この偽のブランド品というのは、中国人でも韓国人でもない、韓国華僑である己のアイデンティティーを現しているという解釈もできます。ジャソンは韓国華僑には珍しい公務員である警察になるなど、韓国社会に受け入れられ、成功したいという上昇志向を持った人物でした。それが偽ブランドを身に着けることで、偽物のヤクザである己と共に韓国人でも中国人でもない韓国華僑というアイデンティティーを受け入れた場面とも取れます。

 

 近頃、日本で話題の言葉に「毒親」というものがあります。毒のように子供の人生を蝕み、阻害する親のことです。このブームのきっかけを作ったアメリカの精神科医はスーザン・フォワードは著作『毒になる親』の中で子供の毒となる親(Toxic Parents)について、「虐待やネグレクト、言葉の暴力など、ネガティブな行動を執拗に継続し、子どもの人生を支配する親がいる(例外は性的虐待で、一回でも最悪のダメージを及ぼす)。そんな、子どもにとって害をなす親」と定義しています。*35

 カン課長は脅したり、ありもしない褒美をちらつかせることで、ジャソンをコントロールしようとしていました。これはフォワードの提唱する毒親の定義にあてはまります。では、その「子」に害をなす「親」の呪いを解くには何が必要なのでしょう?

 それは、ありのままの自分を受け入れてくれる無償の愛を得ることなのではないでしょうか。

 死の床についたチョン・チョンは、裏切り者であることを知った上でジャソンの身を純粋に案じる発言を繰り返します。その言葉にジャソンは劇中では初めてチョン・チョンに自らの感情を露わにし、涙を流します。ジャソンはおそらくこの時初めて、ありのままの自分へ注がれるチョン・チョンの無償の愛情を実感できたのではないでしょうか。

 このシーンを初めて観た時、私はそれまでのこの映画の印象が覆される程のカタルシスを感じました。そしてこのカタルシスとはおそらく、チョン・チョンにありのままの存在を肯定されるジャソンの心の動きを追うことで、観客の一人である私自身もジャソンの感情を追体験し、存在を肯定されるカタルシスを得られたからではないでしょうか。

 自らの命をも犠牲にするチョン・チョンの無償の愛情で、ありのままの自分を肯定されたジャソンは、彼に背を押され、自分の道を選び取ることができるようになったのでした。

*1:新世界400万人突破記念座談会にて監督パク・フンジョンの発言

AIさん『イ・ジョンジェLOVE』(アクセス日 2014年3月18日)

http://www.loveljj.com/banana/1595609

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*32:『P i t a p a t ::』「'신세계' 황정민은왜이정재에짝퉁시계를선물했나」 http://cruzar.tistory.com/entry/%EC%8B%A0%EC%84%B8%EA%B3%84-%ED%99%A9%EC%A0%95%EB%AF%BC%EC%9D%80-%EC%99%9C-%EC%9D%B4%EC%A0%95%EC%9E%AC%EC%97%90-%EC%A7%9D%ED%89%81-%EC%8B%9C%EA%B3%84%EB%A5%BC-%EC%84%A0%EB%AC%BC%ED%96%88%EB%82%98

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*35:スーザン・フォワード『毒になる親一生苦しむ子供』

発行日:2001年10月8日 発行者:講談社